私が初めて修行した東京原宿の「南国酒家」の看板メニューが「蟹の卵入りふかひれのスープ」だった。
初めて食べた時に驚いたのは色だった。
オレンジ色なのだ。
そして、口に含むとふわっとした食感の後から濃厚な旨みが襲ってくる。
「う、うまい!」それしか言えなかった。
でも、いざ作るほうの側になれば、これほど大変な仕事もない。
ふかひれの戻しの作業もさる事ながら、蟹味噌と蟹の内子を集める作業が嫌だった。
春になると毎日、築地から渡り蟹のメスが1箱に15~20杯入った木箱が20段くらい届く。
およそ400杯の蟹が毎日届くのだ。
それをざるに味噌と内子だけ箸で取って集める。
半日がかりで集めた内子1袋分で2~3週間分にしかならない。
1年分集める時は…?ゾッとした。
この時点で個人店ではムリと諦めていたのかもしれない。
柿木畠に移って最初に作ったのが「香箱のまるごと焼売」。
それが突然「!」「…」「そうや。イケるわ。」
「これで例のふかひれのスープ作ろう!」
「何で気づかんかったんやろ?」
案の定作ってみたらこれが大正解。
「う、旨い!」
香箱蟹まるごと1杯に紅ズワイガニとふかひれ…それがムース状のふわふわスープに…
金沢らしい「北陸を代表出来る1品」に仕上がった。
全開口笑を代表するオリジナル料理として「香箱蟹と内子のふかひれスープ」を皆さんにも是非召し上がって頂きたい。でも蟹が解禁の11月中旬から12月中旬の約1か月限定です!